#12 CASPER

普段は主にデザイン仕事をしながら、たまにこうして記事を書かせてもらっているのですが、
この”FEATURE”の取材は毎度、特に変わった場所や人物が多くて。
そして前情報もほぼもらえないのにも慣れましたので、自分もあえて特別な準備はせず、入った瞬間や会った瞬間の感覚や空気感を楽しんで取材させてもらうようにしています。

今回もそんな具合で、大阪へグラフィティを見に行くから一緒に行こう、ということで久々の出張。

自分はHiphopが好きなので音楽もグラフィティももちろん好きですが、 グラフィティの知識はほとんど無いに等しく、作品やタグなども見ただけでは誰のものなのかは判断がつかない。

しかし、デカイし、構図ヤバい!とか、あんな場所にボムってる!とか、デジタルでは今後も味わえないだろう驚きや発見が好きで、街中で古い雑居ビルがあると無意識に上のほうに目が向いたり、つい探してしまう。
海外なんかに行くと特に、思いもよらない場所に描いてあったりで面白いですよね。

で、今回取材させてもらったのは、そんな自分でも名前を知っているグラフィティライター。

名前を知ったのはかなり前で、どこで知ったか誰かに教えてもらったかも覚えてはいないですが、ここ数年もたまたまwebで目にした興味深いプロジェクトで名前を見つけたりもしていて。
ストリートに留まらない創作活動の広がりも凄いし、会える機会があるなら話してみたかった人。

楽しみにしながら、残暑厳しい中の大阪アメ村近辺をプラプラと向かう。
ど真ん中の喧騒から外れ、少し落ち着いた空気が流れる川沿いエリアの角のビル。目的地はこのビルの中にある模様。

ここを登ると上はどんな感じになってるの…?
と、少しドキドキするような階段の幅や角度ってあるじゃないですか。まさにそんな感じの建物。
2階に上がるといきなり全面がコケ風のフサフサで覆われた扉。 どうやら中はギャラリーのようですが、

だいぶ独特な世界観。

そして更に上階へ。絵や造形物、印刷物、スプレー缶など、よりパ-ソナルな部分が垣間見えるものが徐々に目に入ってくるようになり、ワクワクもMAX。

3階に着き、こんにちは~なんて言いながら仕事場と思われる部屋に入ると、落ち着いた貫禄と優しい笑顔の人物が迎えてくれました。


“この人があのCASPERさんなんだ!大きい!”

視界に飛び込んでくる空間の情報量と物量の多さと初対面の緊張からか、スマホのメモに残した第一印象は、自分でも呆れるくらいアホな一文でした。

挨拶もそこそこに腰掛けつつ、改めて部屋の中を見渡すと、壁は様々な作品で埋め尽くされ、棚には沢山のCDやDVD、所々にフィギュア、その他にも絵が描かれたスケベイス etc…



自分も好きなものにだけ囲まれた環境で仕事をしたいというか、そうでないと仕事できないので(笑)、飾るものは違えど、近い雰囲気の場所に来ると、とにかく気になってキョロキョロしてしまう。
冷蔵庫を覆い尽くすステッカー1枚1枚まで気になってしまいました。

この部屋を見たら、より興味沸きまくってきちゃってそこからは質問攻め。

冒頭で触れたストリートに留まらない創作活動というのが、近年参加されていた”FENDI”のプロジェクト。
3~4年前だったかと思いますが、 FENDIが世界から6名のアーティストを集めてコンセプトアートを制作するという内容のもので、それをたまたまファッション系の記事で見かけて。
白人貴族も案外面白いことやってるじゃんくらいの感じでオフィシャルサイトに飛んでみると、参加する6名の中に日本人がいて、そこに”CASPER”と書いてあって。
しかもFENDIが本社にしているイタリアの歴史的建造物の屋上をキャンバスとして、巨大な作品を6名で描くという、まさに貴族の遊びのようなプロジェクト(笑)。


FENDIが凄いとかどうこうよりも、
日本で、しかもいわゆるストリートと呼ばれるニッチなカルチャーの中で好きなことを続けてきて、そういうプロジェクトから声が掛かることなんてまず考えられないですよね。

その歴史的建造物に滞在しながら毎日描き進めて行ったそうで、その経験も凄いと思いますが、どうやらスプレー缶が何本でも支給されるシステムだったようで、途中からそれを売りさばきに行ってた話は本当に痛快というか、すごく好きなエピソードでした(笑)。

どんな場所だろうと、どんな仕事だろうと、ちょっとした悪知恵やイタズラ心が自然と湧いてくるのは、世の中や社会を斜めに見ている、”コッチ側”のカルチャーにいる人の特徴や才能だと思いますし、貴族系プロジェクトでイタリア行ってまでそれやってたのを聞いて、なんか嬉しい気持ちになりました(笑)。

自分も、バレたら絶対また弁護士からお手紙が届くようなイリーガルなデザインのTシャツ作りたいとか、どうやったらバレないか、どう流通させれば辿り着けないか、とか、
44歳の頭の片隅で常々そういうこと考えているのでどこか共感してしまいました。

その他にも、以前西成に全長70m(100平米!!)の作品を描いたプロジェクトの話も聞けて、イタリアのFENDIと西成というギャップもまた面白いし、唯一無二の動きと振り幅ですよね。


他にも、もう17年も経ってるのに改めてビックリしましたが、
2005年に水戸で開催され、自分は行かなかったことを未だに後悔しているX-COLORの話とか。
どれもグラフィティ好きの人には周知のプロジェクトなのかも知れませんが、知らなかった人は是非ググってみてください。凄い作品の画像沢山出てきます。

聞きたかった活動についてひとしきり聞けたところで、屋上があるから行こう、ということでもう1つ上の階へ。
階段を登りきって外に出てみると… これはもう、アメリカに良くあるルーフトップやバックヤードを思わせる最高なやつ。
3階で十分に満腹でしたが、さらにこんなスペースまであるとは。これは羨ましい。ビルに囲まれつつも繁華街に居ることを忘れるいい風が、最高に気持ち良い場所。

そこの壁にもやはり色々な作品が描かれていて、床はもはや塗料だらけでしたが、狙ってか狙わずか、めっちゃ好配色。


大量に置かれたサビサビのスプレー缶。 メーカーも色々あるっぽいなと、次の興味はそこに。

描きやすさの違いや好みはどういうところで分かれるのかと聞くと、中身も然りだけど、どちらかというとノズルの違いだと。
筆やペンでも先の太さやインクの出る量が違うように、スプレーのノズルも吹き出し方が様々ということを、恥ずかしながら初めて知りました。

そしてこれまで色々試した中だと、3Mスコッチガードのノズルが特に良いというのも初耳。
先ほどの悪知恵の話じゃないですが、理想のノズルを探して塗料でもないスプレーのノズルを試してみるという、その発想や探究心はグラフィティライターならではですし、独自の目線でスポット見つけるスケーターの感覚にも近く、目から鱗でした。
ちなみに中国製のスプレーも案外良かったとか(笑)。

そんなこんなで楽しい時間もアッという間に過ぎ、夕暮れ時。初歩の初歩みたいな質問ばかりでも丁寧に答えていただき、ありがとうございました。

道頓堀沿いにも作品があるということなので、帰路に着く前に拝見。


色使い、構図、道頓堀の脇というシチュエーションも含め最高でした。
地域性なのか、大阪は東京に比べて街とアートの共存に理解があるように思いますし、日常にアートがある環境はすごく羨ましく、すごく良い刺激もらえました。

そして記事を書いてるということはもちろん、HAIGHTとのコラボレーションアイテムがリリースします。 今回は西成のウォールにも描かれていた、漢字をベースにした作品を落とし込んだウェアのほか、 1点1点ペイントされたknickknacks製のソフビベアーなど数点がリリースになります。

HAIGHT×CASPER COLLECTION

発売日:2022年11月19日(土) ※サイトでは10:00に公開になります

HTCP-223001
SMOKERS CLUB CREWNECK SWEAT

HTCP-223002
喫煙 HOODIE

HTCP-226001
TAG CODURA CAP

HTCP-227001
CASPER BEAR

HTCP-227002
SMOKERS CLUB CUSHION

HTCP-227003
PVC KEY CHAIN

HTCP-227004
STICKER PACK


更に更に、せっかくコラボレーションで描いてもらうなら、ということで、
(この話の後)仙台のSMOKE SHOP ”HAIGHT”のショップのシャッターにも描いてもらいました。
直で作業を拝見しましたが、フリーで描き始めたことや、その繊細なタッチと正確なコントロール、作業スピードの速さ…
これが玄人の技かと…驚愕でした。


仙台に行かれる際には完成した作品を是非見てみてください。(閉店後しか見れませんが…)

HAIGHTxCASPER Movie


著者:Dr.DARE